皇帝陛下、今宵あなたを殺害いたします―復讐するのに溺愛しないでください―【コミカライズ原作】


ルイナードとともに過ごした夜から、私は日課となるお墓参りを中断し、4階の北側にある書庫に通い詰めている。

午前中はこれまで通りスパルタ授業を受けて、午後からは夕刻まで書庫で調べ物に没頭する毎日。

“待て”が、苦手な私はどうにか書庫で手がかりを得ようと奮闘しているわけなのだけれど⋯⋯

なかなか成果は得られない。


もう。そんな日々を送るようになって、かれこれ十日か。


――『アイリス⋯⋯』


ふとした瞬間、起因ともなるあの夜を思い出してしまう。

とろけるようなキスを幾度も重ねたあと、ルイナードは、堪えるように私を抱きしめて、そのままふたりでベッドに転がった。

少しだけ上擦った声。火がついたように熱い身体。

こうして抱きしめるだけにとどめているのは、彼なりのケジメなのかもしれない。

⋯⋯けれども。薄い布越しに触れ合う身体からは、明らかな彼の昂ぶりを感じて、こっちのほうが修行僧のような気分になってしまう。


『ルイナード――』


意を決して、耐えるように、私の首筋に顔を埋めるルイナードのサラサラの髪を梳いた。


『――大丈夫だ』


しかし、聞くまでもなく。ルイナードは、私の頭から枕を抜き取って、自らの腕を代わりに差し入れると、額にキスをひとつ落とした。

それが答えだといわんばかりに。

< 223 / 305 >

この作品をシェア

pagetop