カレシとお付き合い② 森君と杏珠


 優しく甘く元カノと話す、森君。
何だか泣きそうな気持ちがする。
並んだ2人が、見た感じいい雰囲気なのも。
 森君が、一度は選んだ人。
 向き合った人。
その事が胸を締め付ける。

 だのに、森君と別れてしまって、それで、彼を忘れる事なんて出来るんだろうか。
 彼にただ1人って扱われて、優しくて、甘くて、素敵で、それで別れちゃって、普通に生きていけるのかな。

 なんか、すごい気分になってきた。

 泣きそうになる。

 一度は手に入れた森君の興味が自分になくなるなんて。

 でも、彼の事嫌いになんてなれないだろう。

 森君が誰かを好きになる。
 その大事な人と付き合う。
 別れる。

 私はそのどの人にもさえ私はなっていない。 
でも苦しい。
 『ありがとう』って、抱いた手と彼の温度。
 優しい森君。

 つまり、私は森君が好きなんだと思う。

 苦しくなって、泣きそうになってるぐらい。

 彼に優しくされて
 みんなと同じなのに。
 私だけって思って。

 会計の人が言った。


「付き合ってたって言っても、森君は『オレを好きな子は全員カノジョなんだ』とか、去年言ってたけどねー」

 カノジョって言葉の意味⋯⋯ 。

 元カノが『優しー』とか言ってる声が耳に聞こえた。

 一線おくけど、平等に優しくて、みんなカノジョ⋯⋯ 。


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