「あの花火はなんなんですか? 聞いてませんよ」
 頭上に上がる花火を見て、察しのいい右京は眉間にシワを寄せて俺に文句を言う。
 真田右京、三十歳。青山家の家令で、青山財閥の財務も担当している。
 こいつは長崎の造船所で働いていたのだが、五年前に俺が引き抜いてうちに連れてきた。
 ずっと赤字続きだった造船所が一年で黒字になり、その理由を調査したところ、一社員である彼の仕事によるものだった。
造船所では経理を担当。頼りない上司の下で大胆な経費削減策を行って、赤字を黒字にした手腕は見事だったが、いかんせん右京は会社の金を着服していた。
 理由を聞いたら、病気の母親の入院費を用意するためだった。
 普通なら警察に突き出すところだが、彼の能力が失われるのは惜しい。
 そこで、俺に仕えるならいままでのことは不問にして母親を青山系列の病院で見ると言ったら、右京は取引に応じた。
 それ以降、彼は伊織同様俺の大事な部下となった。
「やはりお前は察しがいいな」
 フッと微笑して右京を褒める。