そう、この花火は俺が伊織に頼んで手配してもらった。
 俺の総帥就任を祝うためではなく、俺が大事にしている皆への感謝の気持ちとして用意したもの。
 凛をうちへ連れてきたのは、いなりの礼をしたかったから。
 じいさんが三日前にニヤけた顔で俺に伝えた。
『喜べ。お前の総帥就任パーティに保科伯爵を招待したぞ』
 余計なことを……と思ったが、そもそも凛がパーティに来るはずがない。
 伊織に彼女の家のことを調べさせた時、保科伯爵はいつも下の娘はパーティに連れていかないという報告を受けた。
 凛のことは自分の実の娘であるにもかかわらず、使用人同様に扱っているのだ。
 俺の読み通り、今日ホテルのパーティ会場に彼女は現れなかった。
 凛の弟に声をかけて『凛はまだ仕事をしているのか?』と尋ねたら、『家にいます。パーティは昔から苦手で』と彼は答えた。
 彼女の弟とは面識があるが、俺が青山財閥の新しい総帥と知って驚いていた。
 家族はパーティを楽しみ、凛はひとりで留守番。