「おはよ」
郁弥の機嫌が謎に高かったのは、何か情報を得たんだろう。
「喜べ、友達は優秀だ。」
「友達がね。」

「佐々木朱里は、中学のときもいじめを受けていたらしい。そのせいで一時期不登校になり、精神科に通っていたって。」
「精神科?」
「調べた限りでは、パニック障害、鬱病、摂食障害、パーソナリティー障害。不登校になる子どもによくある精神病らしい。」
「そこで医者に薬をもらってたのか…。」
「それともう1人、鍵になる人物があがったんだ。」
「え…」

「―桜田 菜々。」
「それって…」
あの日、田部先生に事件の話を聞きに行ったとき、先生のデスクに1枚の写真が飾ってあった。
「素敵な写真ですね。」
「あ、これ?これは、私の思い出のある生徒との写真なの。保健室登校が多くて、よくお話してたわ。」
肩くらいの髪を1つにまとめた綺麗な人だった。
「桜田さんって言うの。卒業式では、桜の木の前で撮りたいってすごい言うもんだから、おかしくって。」先生は肩を揺らした。

「あの桜田だ。」
「いや、まだわかんないよ。」
「彼女は、朱里と同じ精神科の病院に行ってたらしい。パニック障害を持っていたんだ。」
「…ということは、2人共、同じ医師から薬を貰っていた。」
先生から聞いたことを思い出してみる。朱里は保健室で、課題をやったり本を読んだり、そして…
「保健室登校の生徒と少し話したりもしてた。」
「そいつが、桜田 菜々だよ。話すのが苦手でも、似てる境遇で、しかも同じ病気、診てもらってる医者も一緒なら、少しは心も開くだろ。」
しかし、ここで1つ疑問が生じた。
なぜ、田部先生は2人に関係があることを話さなかったのだろう。
保健室登校の生徒と言って、名前を伏せる必要なんてないはずだ。
何か、隠さなきゃいけなかった深刻な事情でもあったのか。