図書室というのは、全く人気のないものだ。
旧校舎にあるからなのか、それともただつまらないだけなのか。小学校の頃といえば、休み時間になった瞬間、皆教室を飛び出して、校庭か図書室に行っていたのに。
高校生にもなると、図書室なんかに行かなくても膨大な情報をネットで調べられるし、どんな漫画や小説だってすぐ読むことができる。
何より、貸出期間がない。
人が本当に少ないので、私はとても好きだった。
郁弥もわたしについてくるかのように、よく近くでよくわからない本を読んでいた。
「それ、面白いの?」
「プログラミングは奥が深い。」
こう見えて、郁弥は機械やネットに強い。
噂ではハッキングもできるとかなんとか。
そんなに、本などという古典的なものとは程遠いものを今私の近くで読んでいるのか、謎でしかなかった。

「で、その事件はどれくらい解決されてるの?」
「それが、もう0に近いらしい。何せ証拠が全く無いし、今ほどネットも普及してなかったから。昨日いろいろ検索してみたけど、ちょっとまとめ記事があったくらいで、それもあのノートに書いてあった情報くらいだった。何がまとめサイトだって感じだよ…。」
「解決したらまじ大儲けじゃね?警察でさえわからないんだろ?」
「15年も前の話だし、あんまり興味ないんじゃない?」
ノートに書いてあった通り、この学校の教師でさえほとんど知らないのだ。今更SNSにこの事件の真相を書いたって、意味なんかない。
「あ、その頃の新聞記事は?地域のとかさ。さすがにそこまで不思議な事件だと記事にだってなってるだろ。」
「たしかに。」
図書室には、県で発行されている新聞の2000年代のものがすべて保管されていた。
時事ネタに使えると教師が残しているものだが、生徒は全く見ていない。
それが今役に立つ。
早速司書の人に新聞の棚を聞いて探した。
2006年の5月。
よく考えると、最近なようで昔だと思った。
写真の写りもまだ荒く、テレビ欄の番組はほとんど分からなかった。
「あ、これじゃね?"県立F高校の女子生徒が自殺"」
大きな見出しではないが、あのノートが書かれた3日後の記事だった。
"女子生徒は同じクラスの他の女子生徒グループからいろいろないじめを受けていた。自殺の方法は、医師から処方されたと思われる薬の大量服用で、亡くなった現場に吐血した跡などは残されていなかったという。遺体や服用した薬などは残っておらず、警察は現在その行方を追っている。"
「その追っていた遺体がどこにも無かったなんて、その頃は皆検討もついていなかっただろうな。」
郁弥がそう呟いて、少しだけ鼻で笑った。
「でも、一つわかった。死ぬために使われたその薬は―」

「―医者から直接処方されたものだったんだ。自分で買ったとか、無理やり買わされたものとかじゃなくて。」