それは、魔法みたいに


仕事にそんなに情熱注いでどうするのとか、結婚は?とか仕事以外で趣味ある?とか聞いてくる奴らに言いたい。

人の心配なんてどうだっていいから————お前らみんなちゃんと仕事しろ!



「ということで、加藤さん頼むね」

部長に笑顔で言われて、私は表情を無にしたまま硬直する。
御上株式会社、コスメ第一営業部にして成績トップで若きエースと言われている私は、今日も元気に仕事に励むつもりでいた。


「すみません、部長。もう一度お願いします」

壊れたAIのように抑揚をつけずに聞き返してみる。聞き間違いであってくれ。


「今日からこの部署の一員になった彼の指導係、よろしく頼むね」

部長は笑みを崩さない。けれどよく見ると笑っているように見える細められた目は完全に閉じている。



「部長、私とちゃんと目を合わせてください」

「いやだな、合わせてるよ」

「閉じてます」

ため息を吐きたくなる気持ちをぐっと抑えて、あくまで冷静に話すことを心がける。

頭に血が昇ってはいけない。ここは職場なのだから、常に落ち着いていないと。




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