夏の夜。

家へ向かう途中、たくさんの男女が浴衣を着て同じ方向へ向かっていることに気付く。

「ああ、花火大会だ。」

最初に発見したのは笹崎の方だった。

「花火大会。」

私は美織をベビーカーで押しながら、呟く。

「どうする?」

笹崎が私の方を見る。

「でも咲良いるし。」

私は行かない選択をした。

もう花火に浮かれる年齢じゃない。
明日だって仕事だし、咲良をお風呂に入れないといけない。

「だよね。」

そう言って笹崎も前を向く。

前までの私なら、毎年浴衣買ってたし、そのことしか頭になかった。
変わってしまった。

「笹崎は、デートで花火大会行ったことある?」

私は少し軽い気持ちで切り出した。

「なんでそんなこと聞くの。」

笹崎が笑いを含めながらも、少し冷たく返してきた。

「私、意外と笹崎のそういうの知らないから。」

咲良が眠そうなあくびをする。

「花火大会はロクなことがない。」
「ええ?」
「だから言わない。」

笹崎の顔を見ると、ふふっと笑った。
何かを思い出してるような。

「そういえば二年の時、笹崎、市川さんと付き合ってたじゃん?」
「あー、あったね。」
「笹崎と別れた後に、市川さん私と口聞いてくれなくなった。」

笹崎はまた、ふふっと笑う。

「笹崎のこと好きな子たち、みんな私のこと嫌う。」

私が笹崎の目を見る。