2番目の恋

自分でもハッとして目を開ける。
笹崎が寸前で止まる。

「ごめん。」というお互いの声が重なる。

笹崎の表情が完全に落ち込んでる。

「ううん、私・・・」

そこまで言って言葉に詰まる。

「俺のことそう思えないって？」

痛々しく笹崎が笑う。

「笹崎のこと好きだし、これからもずっと一緒にいたいけど、今は咲良もいるし・・・」

言ってから思う。

すごく私はワガママだ。
笹崎とくっつくのも怖くて、笹崎が離れていくのも怖くて。

「うん、分かってる。」
「ごめん。」
「いいよ、謝らなくて。どうせそうだと思ってた。」

笹崎の言葉が少し冷たく私の胸に刺さる。

「俺、もうどうしたらいいか分かんねえ。」

髪をバサバサ手で掻くと、そのまま笹崎はうなだれた。

笹崎の重い声に言葉が出ない。
なにか上手い一言が私の口から出てくればいいのに。

「そういうつもりがないなら好きとか言うなよ。」

笹崎が立ち上がる。
私はグッと自分の足を体に引きつける。

「・・・違うよ、もう恋愛とか怖いんだよ。」

そう言いながら、思い出したくない日々が過ぎる。

毎日怯えながら過ごした日々。
怖くて何も言えなくなった日々。
「助けて」と言うことができなかった日々。

「笹崎がそういう人じゃないって分かってるよ。でももう二度と咲良に辛い思いさせたくないんだよ。」

今の自分のよう。
私は自分の生活を自分の手で守りながら過ごしてきた。

この守ってる世界に、他の誰かが入り込んでくるのが怖い。

笹崎のことは信じたいけど、もう二度と失敗なんてしたくない。

目からボロボロと涙が溢れてくる。

目の前に笹崎がしゃがみ込む。
そして少し強く、強引に私の頭を胸まで引き寄せてくれた。

「ごめん。」

私の声が狭い部屋に響く。
咲良はずっと寝ている。

「俺もごめん。」

笹崎は私のことをそのまま抱きしめてくれた。