俺様な幼なじみは24年前の約束を忘れない
柳田兄弟と片岡姉妹

合同家族旅行


柳田家と片岡家の年中行事の一つに、夏休みに行く合同家族旅行があった。

合同家族旅行というと聞こえはいいが、実は、長野県にある柳田家の別荘に、我々も便乗してお泊まりするというものだ。

私たちが小学生四年生の夏休み。
その年も例年通り、長野に来ていた。

到着すると、男子チームはすぐに釣りをするのが毎年のスケジュールだ。

普段は影が薄い父は、昔から釣りが趣味で、ここぞとばかりに活躍する。一年一度の晴れ舞台なのだ。

夕食のバーベキューの材料をたくさん釣り上げれば、「お父さんスゴい!」と称賛される。
父はこの初日に全てをかけていた。

女子チームは涼しい木陰で優雅にティータイムをするのだが、この年は夏休みの宿題に、写生の課題が出ていたので、私と香子は写生ポイントを探しに、別荘近くの林に行くことにした。

何度も来ている土地だ。問題が起こるはずがない。

その油断がダメだったのだろう。

二人で歩いていると、突然リスが飛び出してきて、びっくりした香子が、木の根っこに躓いて転んでしまったのだ。

慌てて駆け寄って、『大丈夫!?』と声をかけた。

痛そうに顔をしかめる香子は、どうやら足首を痛めてしまったようだ。

とても歩いて帰れそうにない。

『助けを呼んでくるから!』
と言うと、

『一人で待つのは絶対にイヤ!
誰かが来てくれるまで一緒に待ってて。』
香子がシクシクと泣き出したので、私も途方にくれた。

私は香子の涙にとても弱い。
泣かれると、しょうがないなといつも素直に受け入れるだけだ。

元来のんびりした性格の私は、まぁなんとかなるでしょと気持ちを立て直し、その場に座り込んだ。

運よく写生に適した場所だったので、周りのお花なんかの絵を描きつつ、私たちは助けを待っていた。
< 11 / 73 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop