毒舌王子は偽りのお人形の心を甘く溶かす

お似合いの彼氏



坂本慎。


黒髪短髪の爽やかイケメン。


私の彼氏である。


サッカー部に所属している彼はいつもならばこの時間は熱心に部活に励んでいるのだが、今日は珍しく休みらしい。


こうして帰り道が一緒になるのはまだ二回目だ。


……告白を受けたあの日以来だろうか?



あれは確か、五月の中旬頃だったか。


学校からの帰り道、公園の横を歩いていると、公園からサッカーボールが転がってきた。


それを、小学校低学年くらいの男の子が追いかけてきて、ボールと同じくらい勢いよく道路へ飛び出してきたのだ。


幸い、そのときは車が通っていなかったから事故にはならなかったが、私はそれを黙って見過ごすことは出来なかった。


だってどう考えたって危ないだろう。
親の教育はどうなっているんだ、まったく。


丁度よく、ボールは勢いのまま道路の端っこにいた私のところまで転がって来たから、それを拾って、こちらへ駆け寄ってきた男の子へ目線を同じにして手渡した。


『サッカー、好きなの?』


さすがにいつもの真顔で話しかけたら幼い子は泣き出してしまうだろう。


そう思い、表の方の顔を使ってなるべくゆっくり問いかけた。


『うん!大好き!!』


男の子は目をキラキラ輝かせて少し食い気味に、そう答えた。


両手でボールを抱きしめるように抱えているのはボールが大きいから、というだけではなさそうだ。


< 13 / 207 >

この作品をシェア

pagetop