罰恋リフレイン
(Non Player Character)
◇◇◇◇◇



まさか夏城蒼くんに告白されるとは思っていなかった。
夏城くんはクラスでも目立つグループの人で、地味な私とは縁がなかった。
だから付き合おうって言われたときはきっと何か事情があるんじゃないかって思った。でも周りには誰もいないし夏城くんはすごく緊張していたから、一生懸命気持ちを伝えてくれたんだって嬉しかった。

誰かと付き合うことに憧れてても自分には無理なことだと思ってたのに、まさか夏城くんと付き合うことになって席も隣になるなんて少女マンガみたい。

でも私と夏城くんが付き合っているなんて知られるのは恥ずかしい。いくら告白してくれても私は夏城くんに釣り合う自信がない。だから今はまだ秘密にしておこう。夏城くんも同意見でほっとした。

クラスの人気者と地味な女子が内緒で付き合う。本当にマンガみたい。私はただ浮かれていた。





「それって本気で? 夏城くんと?」

香菜に報告すると想像した通り驚かれた。

「あのさ薫、勘違いってことない?」

「酷いよ……ちゃんと付き合ってって言われたもん。でも内緒にしてね」

オーブンの前に座ってクッキーが焼けるのを待ちながら香菜に念を押した。
10人ほどの料理部は緩く活動しているため、今はみんな私たちのことなど気にせずおしゃべりしているのだけれど。

「そんなにあり得ない? 私と夏城くんが付き合うのはおかしい?」

「うーん……おかしくはない。けど今まで話したこともないのにいきなり薫に告白って不自然な気がして」

香菜と夏城くんは中学から一緒だった。幼稚園から香菜と一緒の高橋翔くんは夏城くんとも中学からの友人だ。

「高橋くんの幼馴染の友達ってことで意識してくれてた……とか……」

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