丸重城の人々~前編~
「柚希!!」
「あ…中也、く……」
「なんで、こんなこと……」
中也は辛そうに、痛そうに顔を歪ませる。

「早苗さん、が…困ると…思って……」
「だからって…とりあえず帰ろ?」
「うん…」
中也は柚希の手をしっかり握りしめ、支えながら家に帰った。

帰りつき、柚希をベットに寝かせる。
帰ってる途中で、大翔から電話があり“すぐに帰る”と言っていた。
「じゃあ、もうすぐ兄貴来るからね?もう、大丈夫だから…」
頭を撫で、部屋を出ようとする中也。
「え…待って!もう少し傍にいて…?大翔が帰って来るまで……」
その中也の手を握る、柚希。

柔らかく、甘い声。
少し潤んだ目。
震えながら、中也にすがる小さな手。
全てが、中也の理性をぶっ壊すのに十分だった。

「━━━━!!!」
「え…?中也、くん…?」
ただ思いのまま、柚希を抱き締めていた。
「柚希…俺は━━━━」

バン━━━━!
「柚!?
え…?何やってんだよ…。
中也!柚から…離れろ…」
ゆっくり二人の方に近づいた、大翔。
柚希から中也を引き剥がし、柚希を抱き締めた。
「…ってぇな。いいじゃん、ちょっと位……」
「うるせーよ!早く出ていけ!」
「へいへい…」
ガチャン━━━━━
ドア閉めた中也。
そのままズルズルと、座り込んだ。
「ヤバい……でもあれは、反則だろ……」
最近、理性が効かない━━━━
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