森守の令嬢はもふもふ大型獣人に執愛される
 トルトルニアの中でも最も魔の森に近い場所に、他の家よりも立派な家が建っていた。

 朱色の屋根に真っ白な壁は、ディンビエではよくあるデザインである。

 その朱色の屋根の上で日向ぼっこをする少年に、村娘のリディア・シャウレイは叫んだ。

「助けて、エディ! 私、このままじゃ隣国の醜男(ぶおとこ)のお嫁さんにされちゃうかもしれない!」

「はぁ?」

 エディと呼ばれた少年は、不機嫌そうに眉をひそめてムクリと起き上がった。

 くすんだ灰茶色(ミルクティー色)をしたサラサラの髪は、清潔そうに切り揃えられている。お洒落にはまだ興味がない年頃なのか、前髪は潔く一文字に切られた状態だ。

 華奢なその身に纏うのは、白いシャツに黒いベスト。トルトルニアの伝統的な男性の格好である。

 目が覚めるような鮮やかな真紅の刺繍が刺されたキュロットからは、しなやかな脚が伸びていた。
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