森守の令嬢はもふもふ大型獣人に執愛される

 エディの言葉に、ロキースは静かにティーカップをテーブルへ置いた。

 それから何かを思い出すかのように、自身の手のひらをじっと見つめる。

「そうだな……あれは、労いの気持ちからだった。いや、労いとも違うか……。すまない、どういう言葉が妥当なのか、思いつかない。だが俺は、エディはよく頑張っていると、褒めてあげたかった」

 二人きりの部屋で、ロキースの低い声が訥々(とつとつ)と話す。

 飾り気のない言葉は、エディの心に一つ、二つと降り積もっていく。

「エディが頑張ってきたのを、俺は見てきた。俺は魔獣だったから、全部を見られたわけじゃない。けれど、弓の練習をするきみは、誰よりも見てきたよ。弓を支える親指の付け根に肉刺(まめ)をつくって、それが破れても諦めず。弓の弦が腕を叩いて痣をたくさんつくっても、諦めず。でも俺は、そんなきみを見て、どんなに痛いだろう、もうやめればいいのに、と思っていた。だって、大好きなきみが傷つく姿は、見ていて気持ちが良いものじゃなかったから。いっそ、獣人になってきみを守ろうかとも思った。だけど、少しずつ弓の腕前が上達していって、魔獣のあしらい方もどんどん上手くなっていって……トルトルニアのみんなを守れるようになったきみが誇らしげにしていると、俺まで嬉しくなった。そんなエディだから、俺は恋をし続けているのだろう」
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