その後。
 ファリサはまだ眠ったままだったが、深夜帯は完全看護で病院側が診ていると言われてサーチェラスはお白へと戻って行った。


 時刻は23時を回り消灯時間が経過して、入院患者はぐっすりと眠っている。

 
 ファリサもぐっすりと眠ったまま。

 王室専用の特別室は監視カメラがついていて、しっかり警備がされている。

 室内は真っ暗にはされず、小さな電球がついている。 

 

 心地よいファリサの寝息が聞こえている。


 そんな中。

 そっと病室のドアが開かれた。

 静かに入って来たにのはセレンヌ。

 診察を終えて白衣を着たまま入ってきたセレンヌは、ファリサの傍に歩み寄った。


 
「ファリサ…」

 痛々しいファリサを見ると、セレンヌの目が潤んできた…。

「ごめんねファリサ。…私のせいで、辛い思いをさせているのでしょう? …貴女の幸せを祈っているのに…」

 ファリサの手をギュッと握りしめたセレンヌ。

「今夜はずっと一緒にいるから、安心して」

 
 ベッドの傍に椅子を持って来て座ったセレンヌは、眠っているファリサを見つめてそっと微笑んだ。


「…寝顔は…あの人のそっくりね。…あの人の寝顔を見るの、とっても好きだったなぁ…」

 遠い昔を思い出しながら、セレンヌはファリサの寝顔を見つめていた。


 
 
 
 深夜の丑三つ時。
 セレンヌはファリサの手を握ったまま、いつの間にか眠ってしまった。

 椅子に座ったまま眠っているセレンヌ。
 眠っている顔は目元がファリサと似ている。


 コツン…コツン…。
 静かな足音が近づいてきて、病室のドアがそっと開いた。

 入ってきたのは…
 サーチェラスだった。

 夜更けだと言うのに、きちんとスーツ姿で現れたサーチェラス。

 ファリサの手を握って椅子に座って眠っているセレンヌに、ゆっくりと歩み寄って行った。


 ぐっすり眠っているセレンヌは、サーチェラスの気配に気づかないまま眠っている。

 ファリサも安心したように眠っている。

 そんな2人を見ると、サーチェラスは嬉しそうに微笑んだ。


 じっとセレンヌを見つめたサーチェラスは、そっと起こさないようにセレンヌのマスクに手をかけた。

 ゆっくりとセレンヌのマスクを外したサーチェラスは、マスクの下の素顔を見て息を呑んだ。

 
 セレンヌのマスクの下は、古くなった火傷の傷跡があった。
 左側の口元から顎にかけてただれたような火傷の跡があり、右側の頬にはちょっと酷いやけどの跡が残っている。

 
 そのやけどの跡を見たサーチェラスは、ズキンと胸に大きな痛みを感じた。

「…そうだったのか…。この傷を見せたくなくて…戻ってこなかったのか…」

 涙ぐんだ目でセレンヌを見つめているサーチェラス。
 そのままそっと、マスクを元に戻したサーチェラスは、今度はセレンヌの右目に触れた。

 右目に触れると同じ痛みを感じ、この下にも火傷の跡があるのだと感じた。

「…あの火事の中…よく生き残ってくれましたね。…」

 スッとサーチェラスの頬に涙が伝った… …。

「私が愛しているのは…貴女の魂です…。火傷の跡など、全く関係ない…」

 想いが込みあがってきて、サーチェラスは何も言えなくなった。


 そっとセレンヌから離れたサーチェラスは、ソファーの上にある毛布を持って来てセレンヌにかけてあげた。

「もう少し待っていて下さい。…貴女に、こんなに酷い事をした方をちゃんと処罰しますから…」

 そう言って、サーチェラスはセレンヌの額に軽くキスをした。


「…ファリサを産んでくれて有難う…」

 
 それだけ言うと、サーチェラスは病室から出て行った。


 静かにドアが閉まると。

 
 ゆっくりとファリサが目を開けた。

 傍にいるセレンヌを見たファリサ…。


「お母さん…。お母さんの事、殺そうとしたのは…国王様じゃないんだね? …私…とんでもない誤解をしていたの? 」

 不安そうな目をしてファリサはセレンヌに問いかけた。

 眠っているセレンヌは何も答えない。
 だが、毛布を掛けてもらったセレンヌは穏やかな表情で眠っている。
 そんなセレンヌを見ていると、ファリサは胸が痛くなった。


 天井を見てそっと目を閉じたファリサ。
「…ごめんなさい…」

 小さく謝ったファリサは、再び眠りについた。