ちよ先輩のてのひらの上。
ちよ先輩のとなり。

ミッション大失敗



——カチ、カチ。

部屋に響く時計の音を、ベッドに腰掛けて聞いていた。

——カチ、カチ、カチ。

新品のスクールバッグを抱いたまま、針の動きと、じっと睨めっこをする。


下の階から、トタトタ、と誰かが廊下を駆ける音と、……それに続いて、玄関のドアを開閉したような音が聞こえた。

私は、窓からそっと外を見下ろした。

門から出ていく制服姿が、坂の向こうへと遠ざかっていくのを確認する。


——よしっ……。

心の中で、小さくガッツポーズを決めた。


もうすぐで、7時30分……。30分になってからバス停まで全力ダッシュをすれば、まだ何とか間に合うはずだ。


——カチ、カチ、カチ……。


「ちょっと、ひなたー?何してるの?遅刻するわよ」


階段の下から、お母さんの大声が呼びかけてきた。


「はーいっ」


同じように大きな返事をして、私は、ぴょんっ、とベッドから腰を下ろした。

< 1 / 225 >

この作品をシェア

pagetop