カタブツ竜王の過保護な求婚


 ジェマの話にショックを受けてから三日後、手紙の返事が来ないことを考えないようにと、畑仕事に精を出したレイナは日が暮れる前にと、恵みの園を出て土壁沿いに城へと戻っていた。
 そこでふと華やかなドレスの裾を見た気がしてそちらへ視線を向けた。 

 すると大木と土壁との間ですっかり陰になった場所にカミーラが立っている。
 カミーラは土壁をじっと見上げており、もう一人の女性――付き添いの夫人と何かを話しているらしい。
 遠すぎて何を言っているのかまったく聞こえないが、そんなことよりもこの場所をカミーラが知っていることがショックだった。

 もちろん隠された場所というわけではない。
 ただレイナが勝手にカイルとの特別の場所だと思い込んでいただけなのだ。

 それでもカミーラはカイルに教えてもらったこの場所に、会えない寂しさを紛らわすために来たのかもしれないと思えた。
 レイナもまたその通りだったから。

 それから数日後、カインからようやく二通目の手紙が届いた。
 しかし、その内容は非常に残念なものだった。
 アルクネト公国内で新たな問題が起こり、城へ戻るのが遅くなるというのだ。

 だが残念なことに、憂い事はそれだけではなかった。
 ジナフ王が病のために、床に臥せるようになってしまったのだ。
 病気知らずと言われる王族の――ユストリス王家直系のジナフ王の病に民は動揺し、嫌な噂が流れ始めた。


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