モブで地味子な私を、超イケメン男子が、かまってかまって溺愛中!

第6話「ごめんね」

 私は部活に入っていない。
 あえて言えば、帰宅部(きたくぶ)

 ということで帰りじたくをしていたら、私のまわりにクラスの女子が何人も集まって来た。
 
 わお!
 10人以上いるじゃない。

 何だか、ヤバイ殺気(さっき)を感じる。
 もしかして……と思ったら、やっぱりビンゴ!だった。

 リーダー格の子が腕組みして私の前に立った。
 私よりず~っと美人。
 鼻すじがすっと通って、切れ長の目。
 小さな薄い(くちびる)
 
 顔つきがけわしい。
 彼女の名前は白鳥礼華(しらとりれいか)某大会社社長(ぼうだいがいしゃしゃちょう)の娘。

 この子は確か、成瀬君(なるせくん)のファンクラブ会長だとふだんから言っていた。
 白鳥さんって、まるでラノベの悪役令嬢(あくやくれいじょう)みたいって、私が言ったらすっごく怒るだろうなあ。

「ねぇ、三島。話があるんだけど」

 話があるか……
 この雰囲気(ふんいき)、どうせろくな話ではないだろう。
 まわりくどいのもイヤなので、ズバリ聞いちゃう私。

「話? 成瀬君の事」

「そうよ! きやすく名前で呼ばれたり、ずうずうしく一緒にランチへ行ったりして! 悠真様(ゆうまさま)に対するあんたのなれなれしい態度にみんな頭来てんのよ!」

 うわ!
 やっぱり!
 でもなれなれしいのは、私じゃなく成瀬君の方なんだけど。

 でも、そんな反論(はんろん)したら、2倍どころか100倍返し。
 本当にヤバイ。
 白鳥さん、そうとう、あたまに来てる。
 
 そして、他の女子たちもすごい目で私をにらんでる。
 こっわ!

 一応、話だけしてみよう。

「白鳥さん、念の為、言っておくけど、成瀬君と私は単なる友だちだよ」

「はあ? そんなの信じられるわけないじゃない! 単なる友だちが、ゆい~とか呼ぶぅ?」

「じゃあさ、白鳥さんも、成瀬君と友だちになればいいじゃん」

 言った瞬間(しゅんかん)
 あ、言いすぎた。
 またやっちゃったと思った。
 
 私は、たまたまアニメのイベントで成瀬君と意気投合(いきとうごう)し、友だちとなった。
 でも多くの恋する女子たちはそんな幸運もなく、告白(こくはく)する勇気もない。
 それに誰だって、ふられて(きず)つくのは(いや)だもの。
 
 案の定、白鳥さんはすごく(おこ)った。

「そ、そんなの! カンタンになれるわけないでしょ! いきなり何言ってんのよ!」

「じゃあ、これから呼ぶから、成瀬君と直接(ちょくせつ)話して」

「はあ? 呼ぶ? 悠真様はこれから部活なのよ! ここに来れるわけないでしょ!」

 そう成瀬君は野球部(やきゅうぶ)のエース。
 練習が始まると、大勢の女子達が、野球場のバックネット裏に行く。
 
 私も誘われて、1回だけ他校との試合を見に行った事がある。
 170センチ以上ある長身から振りかぶって、すごいスピードボールを投げ、バッタバッタと三振を取る成瀬君は、確かにカッコ良かった。

 今日は、練習が30分後から始まると言っていたから……
 ユニフォームへ着替(きが)えているころだろう。
 
 どうなるか、わからないけど。
 
「一応、成瀬君へメールしてみるね」

「はあ? 三島あんた、悠真(ゆうま)様のメルアドも教えて貰ったの?」

 白鳥さんの質問に返事をせず、私はすぐメールを送った。
 そして10分後に彼はやって来た。

 おお、ちゃんと来てくれた。
 ちょっと無理させちゃったかな。
 ごめんね、成瀬君。

「おう、ゆい、俺これから部活の練習なんだ。ちゃっちゃと片付けるぞ」

 成瀬君はそう言うと、はれやかに笑ったのである。
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