アンチテーゼを振りかざせ
These05.


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「えーーーすごい、ここで僕も仕事したい〜」

「誰でも予約すれば、簡単に使用できますよ。」

「予約方法とかも分かりやすく書いてあって良いね。
流石だね保城ちゃん。」


パソコンに向かう私の隣で、ある物を興味津々に読みつつ話しかけてくるほむさんは「はい、ご褒美。」とお饅頭を1つ差し出してくれる。


彼のデスク横のサイドキャビネットの2段目は四次元ポケットかのように沢山お菓子が入っていて、あらゆる種類のお裾分けを貰えてしまう。


思わず笑ってそれを受け取ると、ほむさんは笑い皺たっぷりに再び口を開く。


「"1人で深呼吸したい時に、
お使いいただくのも良いかもしれません。

挫けそうな時、一度立ち止まるための場所。
一歩踏み出すためのリセットをする場所。

皆様の仕事を支えるツールになると、自信をもってオススメさせていただきます!"」



「……ほむさん、音読するのはやめてください。」

「あ、照れてる。」


パソコンからほむさんへ視線を移してそう注意しても、ケラケラ笑って全く反省はしていない様子だ。


そんな彼が持っている"ある物"


___オフィス運営委員会のリーフレット第2弾。



打ち合わせを重ねて漸く出来上がったそれが、支社を含めて全国にいよいよ配られる。

総務部に印刷会社からサンプルが届いて、ほむさんが私より先にウキウキとそれを読み出したのは約10分前。



「……はあ、なんか泣けてきた。」

目頭を押さえてリーフレット片手にそう言う彼は、あまり冗談でも無さそう。


対する私は、取り上げることになった"1人個室"の記事の文章構成も担当しているので、自分が書いたものをそんな風に読まれるのは気まずさしか無い。


だって、

あの彼女の想いを乗せまくってしまったし。









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