【完結】君の全てを奪いたい〜俺の愛で埋め尽くす〜



 あの言葉が今でもずっと、頭から離れなくて。どうして五月女社長は、そんなことを言ったのか。全然分からなかった。
  
 同情なんかじゃないって言ったけれど、あの言葉はわたしにはどうしても同情しているとしか思えなかった。
  
 今回のデートだってそうだ。……きっと同情。そう思えてしまって仕方なかった。

「奈都、遅れてすまなかった」

「……あ、いえ」

「よし、行こうか」
 
 彼はわたしにそう言ってから、わたしの手を優しく握りしめた。

「……え?」

「こっちの方が、デートっぽいだろ?」

 彼は不思議そうにするわたしに、優しく笑みを浮かべてそう話した。 わたしはその言葉に小さく頷いて、その手を握り返した。

 握り返した五月女社長の手は、温かかった。優しい彼の温もりは、わたしを妙に安心させた。

「今日は、奈都と一緒に行きたい所があるんだ」

「……行きたい、所?」

 彼は歩きながらそう言葉にした。行きたい所って……なんだろう。とわたしは思っていた。
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