愛することを忘れた彼の不器用な愛し方
すぐに戻ってきたママは、また私の愚痴に付き合ってくれる。

「世の中もっといい男いるわよ」

「じゃあママ紹介してよ」

子供みたいに口を尖らせると、ママは呆れたように私を叱る。

「あんたねぇ、仕事ばっかりしてるからいけないの。もっと視野を広げなさい」

「うう……ママまで私を仕事人間だって言うんだからっ」

泣き真似をしたら本当に涙が滲んできた。
仕事をすることの何がいけないのよ。私だって生活かかってるんだから働くわよ。

なんて論点のずれた思考に自分自身やっていられなくなり、グラスに入った残りのお酒を一気に煽った。

アルコールが喉をうるわし、体中の血液をぐるぐると巡らせる。楽しく酔えたらいいのにと思いながらも、飲まずにはいられない私はママにおかわりを要求した。

「困った子ねぇ」

何だかんだ甘やかしてくれるママは私の大好きなピーチフィズを作ってくれる。
ママの優しさが胸に染み涙がこぼれそうになって、私は机に突っ伏した。
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