37℃のグラビティ
episode1:SAYONARA?
運ばれて来た食事を済ませ、窓の外を見つめたままで新海が言う。


「もっと田舎かと思ってたけど、そうでもないな」


「転校して来た時、新海くんと同じ事思った」


見慣れていたはずの景色は、いつの間にか「懐かしい」という気持ちに塗り替えられ、やけに綺麗に映って見えた。


つい3ヶ月前まで、住んでいた街。


たかが3ヶ月、されど3ヶ月。


きっと寛樹の気持ちを変えてしまうには、充分な時間だったのだろう……


すっかり冷めてしまったホットレモンティをひと口飲み、それが寛樹の気持ちと重なる。


最初は熱いものでも、自然に冷めてしまうのは……


紅茶も人の心も、さほど変わらないものなんだ……って。
< 60 / 251 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop