8度目の人生、嫌われていたはずの王太子殿下の溺愛ルートにはまりました~お飾り側妃なのでどうぞお構いなく~
「眠いのか」

「いいえ。失礼しました」

「気にするな。今日は昼間に孤児院にも行っていただろう。疲れていて当然だ」

 悪かったな、とオスニエルが立ち上がる。見送るためにフィオナも立ち上がると、オスニエルは急にかがみ、フィオナの膝裏と肩に手を回し抱き上げた。

「……ふわっ」

「いいから、お前は休んでいろ」

 そのままベッドに運ばれる。

(いやいや、こっちだって着替えとか化粧落としとかあるのですから、すぐ寝られるわけじゃないのですけど)

 アワアワしながら見上げれば、彼と目が合う。なんだか妙な雰囲気だ。だってベッドで、彼はフィオナを上から見下ろしている。ドキドキと心臓が早鐘をうつのも、仕方ないと思う。

「フィオ……」

「キャン!」

 割って入るように、声を上げたのはドルフだ。

「……!」

 オスニエルは我に返ったように、フィオナから離れると、「これで失礼する!」と叫ぶように言って、背中を向けた。

 大きな物音を立てて歩くオスニエルを、ポリーも驚いたように見送る。

「……フィオナ様、よろしかったのですか?」

 しばらくしてポリーが顔を見に来てくれたが、熱が引かないフィオナは、恥ずかしくて顔を上げられなかった。



(やばかった、やばかった、やばかった!)

 オスニエルは大股で廊下を足早に歩く。何事かと目を瞠る使用人たちの視線など、今はどうでもいい。彼女をベッドに寝かせ、無防備な瞳で見上げられたとき、全身の血がざわりとさざめくのを感じた。
 ここのところ、毎日フィオナと話をしているが、時間があっという間に過ぎてしまう。彼女は武力重視のオスニエルには思いつかない方法で、彼の悩みを解決しようとするのだ。
 オスニエルは平和とは縁がない。十五のときから戦場に出て、国を強くするために戦ってきた。だからそうして国土を広げていくことが国のためなのだと信じていた。
だが、彼女となら、戦いに身を投じなくとも、内側から強い国を作れるのではないか。
そんな風に思ってしまう。
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