諦 念

▪▪父・実side


栞那の友人だと名乗る
山本 明奈さんから連絡があった。

申し訳なかったが
患者さんがいるため夕方まで
待ってもらう。

気が気ではない
たった一人の娘が倒れても
すぐに駆けつけられない
我が身をこの時ばかりは嘆いた。

妻の葬儀の時もだったが·····

夕方まで勤務をし
助産婦と看護師長に頼んで
病院へと向かう。
「先生、なぜ、早く言わなかった
のですか?」
と、二人に言われながら
車に乗り込む。

病院につくと綺麗な顔をした
女性とこれまた綺麗な顔をした
男性がいた。
お互いに軽く挨拶を済ませて
一度、栞那の顔を見て安心したかった。

久しぶりに見る我が子に
なぜ?と。
痩せて、頬骨が目立つ
目の下に隈があり
顔色は、真っ白で息をしていないか
と、思えるほど。

私は、二人に振り返る。

明奈さんと言われる子は
涙を流していた。

話を聞く前に先生と話がしたい。
「少し待っていてもらえますか?」
と、二人に訊ねると
「「大丈夫です。」」
と、言ってくれたから
先生に状況を訊ねた。
「睡眠不足と食べていないようです。
胃の中は空っぽでした。
脱水症状もでています。
こんなになって、立っているのも
不思議ですし。
仕事をしていたなんて。
4、5日入院して様子を見ます。
自分で食べて水分も補給出来れば
退院と言うことで。」
と、言われて
先生にお礼とお願いをして
二人が待つ病室に向かう。

二人に
「仕事中だったのでしょう?
申し訳ありません。
明日も仕事あるでしょうに
遅くなりました。」
と、伝えた。

私は、二人に栞那の状態を話した。
二人とも苦しげな顔をした。

男性は、十川さんと言い
栞那の先輩に当たるらしい。
同じ課と言うこともあり
課長に連絡してくれた。
課長も心配されていたようだ。
電話を変わってもらい
お詫びをした。

それから、二人から話をきく
明奈さんは、泣きながら話をし
十川さんは、話せなくなる
明奈さんの代弁をしていた。

栞那は、よき友人よき上司を
持ったと嬉しい気持ちになる

十川さんからは、あの時
あの場を納めた専務と
課の課長、部長とも話した
事を言われた。

「三瀬さんは、仕事も出来る
だからと言ってそれに浮かれることもなく
謙虚で、優しくて
課内でも信頼が高いのです。
そのため、どういう事だと
専務を始め、課長や部長の
怒りがひどく、相手二人に
聞き取りが行われています。
三瀬さんは、その事は
知りません。」
と、言われた。

なんだ、その男は?
栞那は、なにもしていないでは
ないか?
憤りに体がふるえた。

二人にお礼を言ってから
帰宅をするように伝えた。

明奈さんは、私を心配してくれたが、
「目が覚めるまで
ついてあげたいから」
と、伝えると

「明日、また来ます。」と、言ってくれた。

明奈さんと十川さんに
連絡先を教えてもらった。
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