再会は涙色  ~元カレとの想い溢れる一夜からはじまる物語~
「コンサートは彼の夢でした。実際に自分の歌を聞く人と顔を合わせて歌いたいってずっと言ってきたんです。なのに、それさえもうしないと決めた。」
「・・・」
「ただ歌がやりたいというだけではない、理由がそこにあることは私たち関係者はわかっています。」
「・・・」
「何かを守るために、同じようにはいられない。変わらないとならないという理久の焦りのようなものも、私はそばで見ていて感じています。」
女性マネージャーが麻衣の方を見る。

「あなたたちの活躍を知って、理久のコンサートスタッフとして呼んだのは私です。」
まっすぐ、麻衣の目を見るその女性に、麻衣はギュッと心をつかまれる。
「理久があなたのマンションに行くのを、私は見ました。」
「・・・っ!?」
「ただのヘアメイクとアーティストではない関係だと、直感で悟りました。」
「・・・」
「あなたが、理久の”理由”ですか?」
マネージャーの言葉に、麻衣はうまく返事を返せない。
< 94 / 275 >

この作品をシェア

pagetop