運命なんて信じない
賢介さんに腕を捕まれたまま、平石家の玄関へと入る。
そこには社長と奥様が待っていた。

「お帰りなさい」
いつもより硬い表情の奥様。

「上がりなさい」
笑顔のない社長。

この時になってはじめて、私はとんでもない事したのかもしれないと気付いた。
今まで自由に生きてきすぎて、心配してくれる人の気持ちなんて考えた事もなかった。


リビングのソファーに座り、社長がじっと私を見る。

「何で立花の家に行こうと思ったの?昨日遅くなって、危ない思いをしたばかりだろ?母さんはいいって言ったのか?」

普段は挨拶程度しか会話をしない社長。
穏やかな口調だけど、今叱られているのは確かだ。

「違います。奥様は、やめなさいって。私が勝手に行ったんです」

「どうして?」

「・・・」
私は黙ってしまった。
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