柚瑠木(ゆるぎ)さん。今日の晩御飯はエビフライとサラダ、それにポトフです。」

 私は今、テーブルに夕飯を用意しているところです。あれから二人で少し話をして、一緒に夕飯をとりたいという私の望みを柚瑠木さんが聞いてくれたのです。

「ありがとうございます。ですが僕は自分の分は自分で出来ますので月菜(つきな)さんは座っていても……」

「私が、旦那様のためにしたいんです。どうか私のお仕事を奪わないでください。」

 そう言うと柚瑠木さんもそれ以上は私に働くなとは言いませんでした。疲れた旦那様を少しでも癒してあげたい、そう考えることはおかしなことではないはずです。

 向かい合って座って「いただきます」をすると、柚瑠木さんはポトフから食べ始めました。一口食べた後、彼はチラッと私の方を見ました。もしかして一口でバレたのでしょうか……?

「月菜さんは今日の昼間、何をして過ごされましたか?」

「今日は……刺繍をしていました。明日はその本でも探しに行こうかと……」

 全部がウソではありません、空いた時間は刺繍も楽しんでいたのですから。だけど、嘘をついている事への罪悪感もあって……少しだけ胃がキリキリします。

「そうですか、では明日は気を付けて出かけてくださいね。ごちそうさま。」

 あっという間に食べ終わると、柚瑠木さんは食器をシンクに置いてそのままお風呂へ。
 洗い物をするためキッチンに立つと、柚瑠木さんが私の料理も残さず綺麗に食べてくれたことが分かり嬉しくて……思わず「うふふ」と笑ってしまいました。