哀しみエンジン
プロローグ



愛だの恋だの、興味は無かった。

人を好きになったことなんて、一度もなかった。

中学時代、よく知りもしない女子から告白されたので、断った。

理由は「部活に集中したいから」ということにして。

高校時代には、周りの連中が誰かと付き合っては別れる、というその繰り返しの話を何度も聞かされる。

そいつ等が何をしたいのか一切、理解出来ず、そんな話に何一つ面白味も感じなかった。

しかし、ある時を境に、そんな俺が1人の人に夢中になる日が来る。

未だに、自分自身でも信じられないくらい。

今では俺も社会人となり、平日には真新しいスーツに身を包み、青空の下、舗装された歩道を革靴を鳴らし歩いている。

だが、今日は、湿気の多い梅雨時の休日。

かろうじて、雨も降らずに保っている。

その中、野外にて黒のプラクティスシャツにハーフパンツ姿で、仁王立ちしている俺。

あることが始まるまで、まだしばらく時間がある。

ほんの少し遠くに感じるあの4年間、大学生の頃をふと思い返してみる。


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