哀しみエンジン



「はじめの頃、直江くんが雰囲気を変えようと、直向きに自主練を続けたり、先輩に意見しようとしてたって、服部くんから聞いてたよ。それが出来るのは、しっかりとした正義感があるからじゃない、かな」

「いや……それは、自分の為で。自分満足でしてただけです」

「良いと思うよ、自分の為だって。自分の中の大事なものを守り続けることこそ、相当、気力のいることだと思う」

「でも、最終的に逃げてるんで」

「それだって、きっと自分を守る為の大事な行動だったんだよ」

「俺には、そうは思えないですけど……」

「今はそうかもね。今は、自分を責めてしまうかもしれないけど……潰れて、自分が失くなっちゃうより、ずっと良くない? 自分を守る為に、難しい選択を自らで立派に出来たんだと、私は思うな」



他の音をこの世界から切り離してしまう程に、清水さんの声に聞き入っていた。

気付けば、語る清水さんも必死な顔になっている。

俺の為に。

今は「ごめんね、偉そうに」なんて言って、苦笑いしている清水さんだが。

きっと俺に、何としても言い聞かせようとしてくれたんだ。

嬉しい。

何だ、これ。

顔が、胸が熱くて、仕様が無い。



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