王子と姫の狂おしい愛
椿姫が家に帰りつく。
二階堂が、車のドアを開ける。
「椿姫様、どうぞ?」
手を差し出して、車から降りるのを支える。
「ありがとう!」
微笑んで、手を握り車を降りた。

琥珀が有名な御曹司なように、椿姫も有名な令嬢だ。

国内一の家具メーカー藤堂家具の愛娘で、美しきご令嬢だ。
お互い10代の頃から、数々のパーティーに出席していた、琥珀と椿姫。
会場で幼なじみのように毎回会って、話をしていた二人。
恋人同士になるのに、時間はかからなかった。

そして今年、琥珀が父親の会社に入社した時“結婚しよう”と言い出した琥珀。
しかし椿姫の両親(特に母親)は、琥珀はまだ入社したばかりだし、落ちつくまでは認めないと反対している。

椿姫の母親・彩姫子は、椿姫を寵愛していて結婚どころか、琥珀との交際もあまりいい顔をしない。
だから椿姫は、25歳にもなって門限がある。
22時までに帰るように決められている。
しかも花嫁修行と言って、あまり椿姫を外に出さず、椿姫はよく“深窓の令嬢”だと言われている。

「おかえりなさい、椿姫」
「ただいま帰りました、お母様」
「今日、またいい茶葉を買ってきたのよ。
お茶にしましょう」
「はい」
もう夜遅いのに……と思うが、口答えしない。
椿姫は家では、母親の機嫌を損ねないように努めている。
少しでも機嫌を損ねると、屋敷の中に閉じ込めようとするからだ。
そうなると、今度は琥珀が機嫌を損ねることになり、怒鳴り込みに来て大変だからだ。

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