「い、イテテ…」

音も立てずにソファーから転がり落ちた海は、バツの悪そうな顔をして頭を掻いた。

「何すんのよッ!変態!」

「へ、変態って……。
ご、ごめん、レナちゃん。そういう雰囲気かなあって思っちゃって
だって俺と一緒に居たいなんてあんまり可愛い事言ってくれちゃうもんだから…」

「そういう雰囲気ってどういう雰囲気よッ。 これだからあんたは軽いって言ってるのよッ!」

「ごめんって!レナちゃんの嫌がる事をするつもりじゃなかったんだ。 あんまり可愛いから…
本当にごめんなさい。怒らないで…。レナちゃん好きだよ…」

私は嫌がってもいなかったし、怒ってもいなかった。
頬にだったけれどキスをされたのも嬉しかったし、この間抱きしめられた時も全然嫌じゃなかった。

こういう経験がないから、こんな時自分がどんな顔をしているのか分からなくて恥ずかしかっただけなのだ。  しょんぼりと落ち込んだ顔をした海は、ソファーの下座り込んで両手を合わせて何度も私へと謝った。

自分が自分じゃなくなったみたいでもどかしい。 怒っていない。嫌でもない。それをどうやって伝えたらいいか分からずに、可愛くない態度ばかり取ってしまう。

だってこれは答えのない恋愛の問題のようで、それを解くのは私には難しすぎる。
何が答えで、どういう反応をすれば正解なのか。 小説や漫画にも答えは書いていなかった。

机の上での勉強はよく出来た私だったけれど、彼氏という存在は難しすぎる。  こんな事ばかり繰り返していたんじゃあ、いつか海に愛想をつかされてしまうのではないだろうか。