販売員だって恋します
ホテルに入っているケーキ専門店の焼き菓子のようだ。
「え……こんなこと……。困ります。」

すると、神崎はにこりと笑う。
「打ち合わせで美味しかったので、あなたに食べてほしかったんです。」

美味しかったから、食べてほしい。
その理由では、由佳は断れない。
「ありがとうございます。お店の子達、喜ぶと思います。」

「とんでもない。当然ですけど、女性ばかりですねえ……。」
神崎はもの珍しそうにキョロキョロしていた。

その様子を見て、つい由佳は笑ってしまう。
いつも神崎は、どこにいても堂々としていて、余裕があるように見えるから。

「店員も、お客様も女性が多いですからね。」
「こんなことでもなければ、足早に通り過ぎそうですよ。」

周りに目を向けないようにしながら、さっさと歩く姿を想像すると、さらに笑える。

「皆さんそうおっしゃるんですけど、男性の方もプレゼントとか買いにいらっしゃるので、全くいないってわけでもないんですよ。」

「その方……なかなかの勇気の持ち主ですね。」
真顔で言うから、由佳はなおさらおかしくて。
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