それに……自分のような者じゃなくて、彼女にはそれにふさわしい相手がいるだろう。
普段は大人の立ち居振る舞いをしているくせに、時々大藤の前で見せる素直な顔は、可愛いけれど。

自分は他人を幸せに出来る立場ではない。
幸せになる権利もない。

指先に残る由佳の柔らかい肌の感触を振り切るように、大藤はぎゅっと手を握る。

明日の仕事を、今日できる分はやってしまおうと、大藤は秘書室に向かった。



「お疲れ様。」
「お疲れ様です。」

神崎がエスコートして連れて行ってくれたのは、ホテルの最上階のレストランで、それはそれは夜景が素晴らしい。
大きな窓からは、建ち並ぶビルの明かりと、道路の明かりがキラキラと光って、ライトアップされていた。

「すごく綺麗ですね。」
「ええ。なんだか、たくさん電気が付いていると安心します。」

「安心?」
「そう。そこに誰かがいるんだなと思いますから。」
「ああ、確かに。」