「……もー、なんでこんなことまで勉強しないといけないの?」
「リーゼお嬢様を、一人前の淑女に育てるのが私の仕事ですからね」
「それ、絶対、執事の仕事と違うと思う……!」

 たしかにいろいろ教えてくれるとは言っていたけれど! 言っていたけれど! 間違いなく、アルダリオンの教育方針は間違っている。右足を後ろに引き、優雅に腰をかがめる礼を練習しながらリーゼは遠い目になった。
 なんでエルフのくせに、人間界のマナーにまで詳しいのだ、この男は。

(たしかに、アルダリオンの立ち居振る舞いは優雅だとは思うんだけどさ……!)

 公爵家の娘として暮らしていたリーゼの目から見ても、アルダリオンのマナーは洗練されていた。そして、どこの王族に会ってもおかしくはないほど完璧だった。エルフは何百年も生きるというから、どこかで身に付ける機会があったのかもしれないが、それにしたって完璧すぎる。

「――リーゼお嬢様、今、違うことを考えていましたね?」
「うぅ、ごめんなさい……」

 とんとん、とリーゼの肩を叩いてアルダリオンは微笑んだ。