猫かぶりなカップル
「ギリギリセーフ…」



チャイムが鳴るギリギリ前に学校に到着した。



「くるみちゃん、おはよー!」



朝から元気に話しかけてくるのは、隣の席に座る、あたしの親衛隊の一人。



「スズナちゃん、おはよう~」

「くるみちゃんがギリギリなの、珍しいね。どうしたの?」



スズナちゃんの言葉に、あたしは瞬時に顔を赤らめる。



「へへ、昨日の夜、目覚まし時計を朝の7時にセットしたつもりだったのに夜の7時にセットしちゃったんだ。恥ずかしい…」



なんちゃって。



本当はただ漫画を読んでて夜更かししただけ。



しかもSF系のグロ漫画。



表の顔のくるみはそんな漫画読まないし夜更かしもしないもん。



自分の演技力と瞬時に思いつく嘘が怖い。



スズナちゃんはあたしの返事を聞いて「もう、くるみちゃん天然なんだから~!」とあたしにメロメロ。



バカじゃないの? と言いかけた感情を飲み込む。



あたし性格悪すぎ…。



「あっ、王子も遅刻みたいだよー」



スズナちゃんがそう言って廊下を指さした。



廊下を歩いているのは、隣のクラスの神城 奏(カミシロ カナデ)。



ただ歩いてるだけなのに、キラキラしたオーラが全身を纏ってる。



甘めフェイスに爽やか・優しい性格の彼のあだ名は『王子』。



おまけに学年で一番頭が良い。



見た目も中身も王子みたいなのは認める。



だけどあたしはこの神城が実は嫌い。



ほとんど喋ったことはない。



それなのに嫌ってる理由は、あたしが勝手にあいつをライバル視してるから。



まず、あだ名が『王子』ってなに?



性別は違えど、あたしとキャラが被ってて、注目があっちに行くのが許せない。



あいつがいなければこの学校で一番の人気者はあたしなのに…。
< 2 / 92 >

この作品をシェア

pagetop