「琴子、あなたのお見合いが決まったわ」

身上書と書かれた一通の封筒を差し出しながら、母は私にそう告げた。

就職はせずにお嫁に行くまで家にいるように言われたときから、自由な結婚は望めないと覚悟していたが、その性急さに戸惑いを隠しきれない。

私は二ヶ月前に大学を卒業し、実家で家事手伝いをしながら花嫁修業を始めたばかりだ。

リビングのソファに腰を下ろしながら、母は声を弾ませる。

「本当はもっと時間をかけて、じっくり探すつもりだったのよ。あなたを幸せにしてくれて、私のお兄さまの会社も助けてくれる人を。でも早々にこれ以上ないほどの理想のお相手が現れたの」

どうやら母にとっても想定外の出来事だったようだ。

それにしても、これ以上ないほどの理想の相手とは一体どんな方なのだろう。

「あなたのお相手は、幅広い分野で事業を展開している真崎貿易グループのご子息、透哉さんよ」

「えっ……」

私は思わず息を呑んだ。