エリート外科医の不埒な純愛ラプソディ。

 そういえば、大学の頃から、こういう時に限って、一番に駆けつけてくれるのはいつも決まって窪塚だったなぁ。

 いつもいつも口は悪いし、私の意思なんてまるで無視で強引だし、情事の最中だってメチャクチャ意地悪だけれど。

 毎回意識を失ってしまう私が正気を取り戻すまでずっと抱きしめてくれていた。

 不慣れな私のことを気遣ってか、はたまた罪悪感からなのかは知らないが、事後処理どころか着替えまで、毎回ちゃんと済ませてもくれていたし。

 なにより窪塚の腕の中は途轍もなく居心地が良かった。

 こんな非常時だというのに、何故だか、窪塚と出逢ってからこれまでのことがあたかも走馬灯のように次から次へと絶えることなく脳裏に浮かびあがってきて、お陰で恐怖心は薄れてくれたものの……。

 あぁ、もしかして、ずっと窪塚のことを敵視していたのは、無意識に窪塚のことを意識してしまっていたからだったのかなぁ。

 ――てことは、好きの裏返しだったってこと? 

 ハハッ、笑える。今頃そんなことに気づくなんて、そりゃ誰にも女扱いされない訳だ。

 ここへきてようやく自分の気持ちに気づくこととなってしまった私は、あたたかな窪塚の腕に包まれたことで心底ホッとしたせいか、そこで意識を手放してしまうのだった。

 意識が薄れていくなかで、幾度も幾度も抱きとめた私の身体を揺すりながら必死な声音で私の名前を呼び続ける窪塚の声をどこか遠くに感じながら。
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