不本意な初夜でしたが、愛され懐妊妻になりました~エリート御曹司と育み婚~
 


「はぁ……。ほんと、勘弁してくれ」

「へ?」

「そういうこと、不意打ちでされると抱きしめたくなる」

「え──」


 次の瞬間、昨日とは比べ物にならない力で、身体を強く抱き寄せられた。

 驚いて身体を硬直させたら、大きな手が安心させてくれるように私の後ろ髪を優しくなでた。


「と、灯?」

「俺も、もう少しこのままでいたい」


 甘い吐息が耳元にかかり、身体の芯が熱くなった。

 逞しい腕は慈しむように私を包み、太陽の日差しのようなぬくもりを心にくれる。

 ああ、そういえば──初めて身体を重ねたあの夜も、灯はこんなふうに最初から最後まで優しかったんだ。

 とくん、とくん、という心地の良い鼓動の音が鼓膜を揺らす。

 その音は小さな画面の中で見た命の点滅と重なって、胸の奥が熱くなった。




 
< 76 / 174 >

この作品をシェア

pagetop