あいにくですが、エリート御曹司の蜜愛はお受けいたしかねます。
わたしは自分で言うのも何だが、そこそこ(・・・・)モテる――いや、モテ()

あくまで『そこそこ』のレベルだけど。


学年一の美人とはいかないけど、クラス投票があるとしたら二番目か三番目には票を貰えるくらいはそこそこ(・・・・)で。

そこそこ(・・・・)小ぶりな体格。(百五十五センチ、体重は四十Xキロ)

そこそこ(・・・・)ボリュームのある胸。(下着(ブラ)のサイズはF65)

そこそこ(・・・・)大きな二重まぶたは、化粧を盛ればそこそこ(・・・・)パッチリだろう。

自分ではもう少し薄くても良かったと思うそこそこ(・・・・)厚めの唇は、艶のあるリップを塗るだけで男性の目に()まりやすくなる。


そんな、そこそこ(・・・・)男ウケする要素が良かったのかもしれない。

学年一、いや学校一の美人の子は、崇拝されてはいたが彼氏がいないことが多かった。“高嶺の花”には安易に手をのばせないものなのだろう。

そんな高嶺の花と違って『そこそこ』のわたしは、『いい出会い』を逃さない為の努力が必要だった。
出会った相手との会話に困らないように、常に流行にアンテナを張り、オシャレにも気を配る。

努力の甲斐あって、定期的に彼氏は出来たし、待ち合わせなんかで一人で立っているとよくナンパもされた。大学生になるころにはそれにも慣れて、強引なナンパのあしらい方も覚えた。合コンにもそれなりに行ったし、そこで後腐れのない相手と後腐れのない一夜を楽しむことだってあった。

あの頃の自分は、世の中に溢れるキラキラと輝く素敵なものを欲しがり、努力さえすれば、そこそこ(・・・・)欲しいものを手に入れられるのだと信じて疑わない、若さだけの痛い女だった。

そんな痛い女だって、いつか現実を思い知る日が来る。

わたしにとっては、それが『三年前のあの日』だっただけ。


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