13番目の恋人
第11話

小百合

「やあ」
お昼休みもギリギリになって、移動中の廊下で、野崎さんその人と、大宮くんが前を歩いてきた。
 
今日は、お昼休憩、外だったのだろう。「出先でそのまま昼食。ね、野崎さん」大宮くんがそう言って、野崎さんが頷く。
 
「なんだか久しぶりな気がします」
全然そんな事もないのに、つい口を突いてしまって、大宮くんが野崎さんからは見えないのをいいことに、にやにやするので、私は顔が熱くなってしまった。
 
「ああ、そうだ、香坂さん飲むヨーグルト好き?」
「え、はい」
「じゃあ、あげる。飲んで」
そう言って、ストローのついた乳酸菌飲料を手渡された。
 
「この人、牛乳と間違えてこれ買ったんだってさ」
「色が同じだからだろ」
「あ、でも美味しいですよ」飲んだことあるけれど、美味しかった。
「うん、でもコーヒーに入れるつもりで買ったからさ」
「俺は腹弱いから、貰えないし、香坂さん貰っちゃえば」大宮くんがそう言ってくれて、受けとった。野崎さんは少し微笑んで、そのまま二人は歩いて行った。
 
「つか、野崎さんコーヒーブラックっしょ」
「イライラにはカルシウムかなと思ったんだよ」
「全然イライラしてないじゃないですか」
「え、ぷんぷんしてるよ、俺」
「……ぷんぷんてなんすか」
 
大宮くんが振り向き、私に、先に行く野崎さんの背中を指差して
「可愛いだろ?」と、口パクで言った。

私はコクンと頷いた。ぷんぷん、してるんだ……忙しいのかな。
 
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