君との子がほしい~エリート脳外科医とお見合い溺愛結婚~


 そこまで聞いて自然とその場を駆けだしていた。

 背後から「おい、久世」と曽我が咄嗟に呼び止めたような声が聞こえたものの、足を止めている場合ではない。

 これまで、久世という苗字の人間に多く会ったことはない。

 この周辺で久世という苗字の上、幼稚園の教諭。舞花である確率は極めて高い。

 これでもし舞花でなければ、それはそれでいいことだ。

 救急搬送された患者が入る救急センターに飛び込むようにして入り、搬送されてきた患者を見て歩く。

 その中に、点滴に繋がれベッドに横になる舞花の姿があった。


「舞花」


 仕事中に倒れ搬送されたとさっき曽我が言っていた通り、舞花はキャラクターのエプロンを身につけ、朝は下ろしていた長い髪を左右に分け三つ編みに結っている。

 転倒した際のケガなのか、左の頬にガーゼが宛てられ手当てが施されていた。

 一体どういう状況で搬送されたのか、誰か人を捕まえて訊こうと振り返ったとき、救急担当の看護師が「久世先生」と声をかけてきた。

< 199 / 238 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop