【コミカライズ化】異世界で絶倫魔導師に買われたらメチャクチャ溺愛されています。

9.彼の指は甘いのに、ちょっと意地悪

 しかし、そのタイミングで、ガタンッと馬車が大きく揺れる。

「あっ……ぁっ……」

 道が悪いのだろうか。ガタガタと音を立てて、客車が上下に揺れた。
 ぐにゅっと強く肉芽を押されてしまい、全身から力が抜けていく。

「ああっ……!」

 脳芯が真っ白になってしまうほどの愉悦。
 そのまま、ガクリと彼の膝に倒れこんでしまった。

「あ……はぁ……」

「どうだ。少しはマシになったか?」

 首だけ捻ってパーシヴァルの顔を見上げると、心配そうにのぞき込んでいるルビー色の瞳を目にした。

「は……い……あ、ありがとう……ございます……」

 掠れた声でそう返すと、彼がくくっと喉を震わせて笑った。

「礼を言うとは……純粋な娘だな」

 膝までずらされていた下着を引き上げられる。
 そしてスカートのすそを直され、滑らかな太ももを隠された。

 しかしリンは、官能の余韻で身体が動かない。

「しばらくそのままの体勢でいたらいい。媚薬は抜ける途中が、一番だるくなるからな」

「はい……」

 パーシヴァルの膝にコテンと頭を乗せると、ハーブのいい香りがした。

(イランイランとか……レモングラスとか……爽やかで心が落ち着く……香り……)

 すう……と寝息を立てて、リンは寝てしまった。
 馬車道の揺れも、今はとても心地いい。

「寝てしまったのか?」

 低く落ち着いた声で問われるが、意識は眠りに落ちていた。
 ただ、優しく髪を撫でてくれた手の感触だけは、夢の中でも感じていた。


 §§§


 ゆらゆらと揺蕩う意識の中、リンは懐かしい夢を見ていた。
 母と一緒にキッチンに立ち、朝食の用意とお弁当つくりを手伝っている。

「お母さん。たまご焼きできたよ」

「あら、美味しそう。かつおぶしを入れたの?」

「うん、長ネギの刻んだのも入れてみた。いい風味だと思わない?」

 たまご焼きの載った皿を見せると、母が嬉しそうに鼻をくんくんさせた。

「ほんとうね。いい香り……凛はお料理が上手ね」

「えへへ。お母さんほどじゃないよぉ」

 母と一緒に料理をつくるのが大好きだが、褒められるのはもっと好きだった。
 優しい母が大好きだったから。

 豆腐とわかめのお味噌汁、焼きジャケにお漬け物をテーブルに次々と置いていく。
 そしてお弁当に、ピーマンの肉詰め、たまご焼き、タコさんウインナ、デザートのイチゴを添え、パラパラッとふりかけを白ご飯にかけた。

「美味しそう。お昼休憩が楽しみだよ」

 起きてきた父が、白いタンクトップとステテコ姿でリビングに現われた。
 最近、ちょっと薄くなってきた頭をカリカリと掻きながら、あくびをしている。

「おはよう、お父さん」

「おはよう。凛」

「温かいうちに朝ご飯食べよう」

 父と母と凛の三人で囲む食卓。
 そんな幸せな日々が、いつまでも続くと思っていたのに――


 §§§


「……起きなさい」

「起きなさい。リン」

「んん……」

 肩を揺さぶられ、リンは気持ちのよい心地で

(いい夢みたなぁ……起きたくない……)

「到着したから、起きてくれ。リン」

「あっ、は、はい!」

 名を呼ばれ、リンははっと起き上がった。

(えっと……私、すっかり寝てた?)
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