「ごめんなさい、二人とも! 約束の時間に間に合わなくなっちゃって……」

 聖壱(せいいち)さんの運転する車が駐車場に止められると同時に、助手席のドアが開いて香津美(かつみ)さんが降りるなり走り出そうとします。私と隣に立っていた杏凛(あんり)さんはそんな香津美さんの行動に驚き、彼女を慌てて止めに行きます。
 なぜならば香津美さんのお腹の中には小さな命が宿っているのです、走って転びでもすれば大事になりかねません。

「止めて下さい、香津美さん! 妊婦の貴女が走らなくてもお店は逃げていきません」 

「そうですよ、もう自分一人の身体じゃないと思って行動してください。見てくださいよ、聖壱さんが車内で気を失いかけてます」

 杏凛さんの言葉に思わず車を見ると、確かに聖壱さんが真っ青な顔でこちらを見ていました。元々アクティブな香津美さんだけに、夫の聖壱さんも気が気では無いのでしょう。

「ごめんなさい、つい気が急いちゃって。早く二人にあいたかったのに渋滞にハマっちゃうんだもの、嫌になっちゃうわ」

 妊娠して香津美さんはしばらく悪阻などで体調が良くない日が多く、こうしてみんなで集まるのは久しぶりなのです。
 私も話したいこと聞きたいことが沢山ありますし、それは香津美さんや杏凛さんも同じでしょう。この日をとても楽しみに待っていました。