あの後、あの場に座り込んでずっと泣きじゃくるわけにもいかず、あたしはオープン当初の1年前から常連のBARに足を運んだ。


こんなみっともない顔で行くような場所じゃないことは重々承知、だけど行かずにはいられなかった。


浴びるように飲みたい気分だったから。



お店に着くや否やちょうど同じ店に入ろうとしていた女の人がぎょっとした顔であたしを見た。


嗚呼、そんなに酷い顔してるんだって分かっちゃうくらい女の人の顔が引きつってたから。



それでも構わずあたしは「入ってもいいですか?」なんて聞いてお先にどうぞって形で道を開けてもらい、店内に足を踏み入れた。



週に一度は飲みに来るBAR。


それはただ単にここのお酒があたし好みの味だから週に一度、金曜に必ず来る。


だけど、今日は金曜じゃなくて火曜日、普段なら訪れない曜日。


けど、そんなこと言ってられる精神でもない。

カウンターの一番端の壁側の席、ソコがあたしの定位置。


カウンターには他にも数名座っているのに、そこの席だけはいつも空いてる。


いつものように腰を掛ければ「いらっしゃいませ。何に致しますか?」なんて鼓膜を震わせるような甘い声があたしの聴覚を刺激する。




「…テキーラ・サンセット」


「火曜日に来るなんて珍しいと思えば、頼むものも珍しいですね」


「うん…だからテキーラ・サンセット」


「承知しました」




あたしはカウンター越しにいるバーテンを見つめ「テキーラ・サンセット」が飲みたい、と伝えると華麗な動作で作るその姿に魅入る。



嗚呼、やっぱりかっこいいな…シェイカー振る姿。


栗色の髪にゆるいパーマをかけていて、ぱっちりしたアーモンドアイに唇の下には誘っているんじゃないかと錯覚させられるような、彼の魅力をより引き立たせてるホクロ。

それがまたエロい。


そんな彼の虜になった女は数知れず、このBARに来るお客さんは8.5割が女性でもちろん彼目当て。


カウンターは競争率が高くて早いもん勝ちみたいなところがある。


席は10席あるんだけど、必ず2つずつ開けて座らされるから4人までしか座れない。


そのうち一番端はあたしの定位置だから3人になるわけなんだけど、その3席をいつも色んな女性が奪い合ってる。


本当怖いよね。


あたしはユア命だったから彼の魅力は分かっても、奪い合いに参加するほどの気持ちはなくて、ただの目の保養として見てた。




「はい、どうぞ。テキーラ・サンセットです」


「ありがとう、相変わらずモテてるね。ショーマは」


「別に。それよりついに失恋でもした?」


「…っ」