導かれて、放れられない
「若?」
「…………」
「若!?」
「え?あ……わりぃ…!」
天聖が桔梗を解放する。
でも、桔梗は天聖の服を離せないでいた。

「おいお前、いつまで若にしがみついてやがる!
いい加減に離せ!!」
天聖の部下の宅間が、桔梗の肩を掴んだ。

「あ、す、すみません!」
「いや、いいんだ。俺が急に抱き締めたから……」
「いえ……」

放れたくない━━━━━

そんな想いで、桔梗は天聖を見つめていた。
その想いは、天聖も同じだった。

「若、オヤジが待ってます」
「あぁ…
あ、これ」
天聖は名刺を渡してきた。

【虎尾組 若頭
天虎会 組長 西尾 天聖】

「え?これ……」
「いつでも……いや、必ず連絡ちょうだい!
待ってるから」
そう言って、去っていったのだった。

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

「桔梗~!さっきの何~?
知り合い?スッゴいイケメンだった!」
仕事が終わり更衣中に、友人・智実が話しかけてきた。

「うん、たぶん……」
「たぶん?」
「きっと信じないだろうから、智実には言わない!」
「えーー!教えてよぉ!」
「笑わないでよ?あと、バカにしないでよ?」
「うん、わかった。真剣に聞く!」
桔梗の真剣な眼差しに、智実も表情を引き締めて椅子に座り直した。

そして天聖の方も━━━━━
「若、あの女知り合いですか?」
天聖の片腕の部下・増見が話しかけてきた。

「たぶん」
「は?たぶん?」



「「昔、いつも…一緒にいた」」



二人は全く同じ思い出を語った。



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