導かれて、放れられない
嫉妬
「よし、後は天聖さんが帰ってくるの待つだけですね」
「はい」
「コーヒー、入れましょうか?」
「では、俺が……」
「え?たまには、増見さんがゆっくりしてください。
ね?ほら、座ってください!」
桔梗が増見の手を持って、ソファに引っ張る。

「………」
増見は心がかなり揺さぶられていた。
桔梗が、天聖のマンションに住み始めてからずっとそうだ。

天聖は本来、あまり笑わない。
感情を殺して過ごしている。
無関心で、冷酷。
裏切り者にも容赦ない。
例外なく、消すのだ。

そんな天聖が桔梗に再会?し、桔梗に対し笑顔を見せ穏やかになっていく。
この一見地味な女に、何があるのか不思議だった。

それが最近になって、わかるようになってきたのだ。
言葉では表現できない、心に温かいものが灯った感覚。

「はい、じゃあ…座っててくださいね!」
「はい…」
パタパタ…とキッチンに戻る、桔梗。

「楽しそうだな」
気づくと、腕を組みドアにもたれた天聖がいた。
「え?天聖さん!?」
「あ、若!お疲れ様です!」
バッと立ち上がる、増見。

「ん。
桔梗、ベット行こうか」
「へ?でも、食事……」
「てか、無理やり連れてくけど……」
「━━━━!!」
あっという間に天聖に抱き上げられた。

「あ、増見」
「はい」
「今日はもういいよ」
天聖は寝室に向かいながら、言ったのだった。

ベットに下ろされ、組み敷かれた桔梗。
桔梗の口唇をなぞる、天聖。
「天聖さん、いつからいたんですか?」
「んー?
コーヒー、入れましょうか?から」
「え?そんな前から…?
なら、もっと早く声かけてくれればよかったのに……」
< 29 / 52 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop