アマッドも正面に座る男の言葉に同意する。
「それはいいな。エルセ、きみも俺の膝の上に乗る?」
「乗りませんっ!」
「正直、観劇よりもエルセとずっとこうして話していたい」

「わ、わたし……の話なんて大して面白くも無いですし」
「そんなことはない。きみは博識だし、忌憚のない意見をはきはきと言うところも好ましい。商会の妻となるにはぴったりだ」

「そうなの。エルセはとっても頭がいいのよ」

 フューレアは友人のことを持ち上げる。博識で数か国語を話すエルセはカルーニャ語もそれなりに操ることができる。結婚をしてかの地で暮らすことになればすぐに現地人と同じくらいの語彙力になるだろう。

 アマッドも商会主の息子としての教育を施されているため、母国語の他に通用度の高い言葉を二つ話せる。

「ありがとうございます。フューレア様だっていくつもの国の言葉を話されて、わたし初めてお会いした時さすがはナフテハール男爵家だと思いましたわ」
「ありがとう、エルセ」

 どうにか会話を軌道修正できてフューレアはホッと一息ついた。
 このまま際どすぎる会話が再開することなく劇場へと向かいたい。

 日暮れ前のレストランで軽い食事をとった四人はそのまま劇場へと向かった。麗しの公爵令息でもあるギルフォードは有名人でもあり、こちらに向けられる視線の数の多さにひるみそうになるが、四人で談笑しているところに不躾に割って入るような人物はおらず、先日と同じように開演前に軽くお酒を飲んだあとにボックス席へと向かった。

 ちなみに男二人は舞台よりも、彼らの花を愛でることに熱心で、舞台の幕が下りたあと、それぞれのパートナーから「舞台を観て」と言われたのであった。