やっぱり幼馴染がいいと彼氏に振られたら、彼のライバルと恋人の振りをする事になりました

トラウマの強襲


「あ、雪子さん!」

 それは仕事帰りに不意に遭った事故のようで。
 夕方から冷え込んでくる六月の終わり。
 竦む身体に応えるように、鞄から下げた 禰豆子(ねずこ)のキーホルダーがちゃり、と鳴った。

 少し鼻にかかる甘い声。
 たたたと小走りに駆けてくる小柄な身体に、私の身体はぴたりと固まった。

 先程職場で気付いた自分の気持ちと向き合う前に、再びトラウマを突きつけられた心持ちになる。

「……愛莉さん? どうしてここに?」
 なんで私の職場なんて知ってるんだろう……
「だって智樹が話してた事があるもの。ねえ、雪子さん、智樹知らない?」

(智樹……何でも愛莉さんに話すのね……)
 正直げんなりとしたが、けれどそれ以上に気になる単語に首を傾げた。
 え、智樹?

「知らない、けど……智樹がどうかしたんですか?」
「家に帰って来ないの!」
 叫ぶような声に、その内容にぎょっと身体が強張った。
「ええ?! 大変!! ……って、職場には……あ、ご両親や警察? ど、どこから連絡したらいいの??」
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