ピエロの初恋
「姉さん、お疲れ様」

健斗が声をかけると、愛は「thank you!」と笑う。そして健斗の耳元で「またあの子来てるよ」と囁いた。それを聞いた刹那、健斗の顔が一瞬にして赤く染まる。

「おっ、本当に健斗あの子に恋してるんだね〜」

「違うよ!ただのお客さんでしょ!」

からかう愛に健斗は反論し、舞台の方に顔を向ける。舞台ではまだ猛獣による火の輪くぐりが続いていて、観客の歓声が聞こえてくる。

この中にあの子がいる……。そう思うと、健斗の胸が音を立てていく。健斗は最近気になる人ができたのだ。初めて人に感じる特別な想いに、とても戸惑っている。

「あのさ、一つ言ってもいい?」

舞台を見ている健斗に、愛がどこか切なげな目をしながら言った。

「後悔しないようにしなさいよ。ここにいられる時間、限られてるんだから」

「……うん」

時間は限られている。それを、健斗は一番わかっていた。

健斗と愛の両親は幼い頃に亡くなり、しばらく二人は施設で暮らしていた。しかし、このドラゴンサーカスの団長が引き取ってくれたのだ。
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